三人吉三廓の初買 [乱読三昧]
歌舞伎の定番演目「三人吉三廓の初買」の初期脚本。
江戸時代の古典はさすがに現代語との違いも少なく読みやすい。さらに、新潮版では、注釈が各ページに見やすく配置されており、部分的にふりがなのように現代語訳が挿入されているため原典の趣を楽しみながら無理なく理解することができる。
当時の歌舞伎は現代で言えばトレンディードラマであり、同時代のはやりの風俗/題材に役者のゴシップなどを差し挟みつつ進行するポップカルチャーの定番のようなものだったようである。
この作品はストーリーを楽しむと言うより江戸時代の風俗や言葉のリズムを味わう作品なのだが、作者「黙阿弥」は後生にのこる決めぜりふの達人で、有名なところでは
「しらざぁ、言ってきかせやしょぅ」 (弁天小僧)
など、演劇など長く引用される言葉を生み出している。こうした言葉は私の幼い頃の記憶に定着しているので、新劇など、うちの父親が見るような後の大衆演劇にも受け継がれていったのだろう。
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