メンテナンス効率の追求 [IT業界日記]
How Stuff work サイトのエレベータに関する項目
http://science.howstuffworks.com/elevator9.htm
のリンク集に北米シンドラーサイトがあるのだが、結構充実したサイトであることに感心させられる。
ノーツで作られた、My Schindler にアクセスすることにより
http://www.us3.schindler.com/sec/myschindler.nsf
設計/メンテに必要な図面から、個別のビルのステータス、対応状況、マイルストーン、サービスマンのスケジュール管理まで可能になっている。さらにこれらは、フィールドからPDA経由で部品検索を含め可能になっているようだ。
Otisのサイト
http://www.otis.com/corp/a1-home.html
を見ても、エレベーター会社が、特にメンテナンス効率を追求するためにIT 化に積極的であることがわかる。
さて、事故に関してはブレーキのボルトに緩み 死亡事故エレベーターという報道がある一方、開ボタンによる暴走という報告もあるようだ。
この事故では、
開いたままではインターロック機構の存在のために上昇動作をしないはずのエレベーターが上昇した
ことが一つのポイントで、旧来型のエレベーターでは、各階のメカ的なインターロックが役割を担っていたはずである。
反面、メカの介在は、メンテナンスには負荷となっていたはずであり、また、些細な異物の挟み込みで搭乗者の閉じ込め事故など、メンテナンスマン派遣の原因ともなっていたはずで、業界としては故障頻度の少ない機構の採用を進めていたのではないかと考えられる。
報道では、対象となるエレベーターのインターロック機構がどうなっているのかいまいち明確ではない。はたして、ブレーキの故障により、ロックが強制的に破壊されたのか、それとも、センサーに依存し、制御盤を経由してブレーキがかかる、制御タイプのロックであったのか。
度重なる報道でメンテナンスにより、故障が発見できなかったということから、制御システムのソフト的障害なのではないかと思うのだがどうなのだろうか。
今日になっても,コントローラー説と,ブレーキ説の両方が報道されていますね.
http://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejfms/124/8/124_679/_article/-char/ja/
に,電気学会論文誌Aにエレベータの歴史と今後の課題という,
三菱電機の方が書かれた,エレベータのメカと制御技術の詳細解説論文の全文があります.エンジニアとしての慎重さも忘れていない,優れた解説だとおもいます.
それにしても,メカ故障とコントローラー故障の両方が起きないとこんな事故はおきないように思えるのですが.
by 石原茂和 (2006-06-15 10:46)
おお、ありがとうございます。
>メカ故障とコントローラー故障
そうですね。本来規制により安全装置が多重化されているはずが、何らかのデザイン制約で「制御盤」あるいは、「ブレーキ」などに集中しているのかともおもうのですが。
ただ、単に、さまざまなことが同時に起こったきわめて稀な偶発的事故と言う可能性もありますが解せないですね。
by Hiroshi (2006-06-16 00:38)
昨日あたりの新聞では,
コントローラーの問題だという記事が多いですね.
でも,コントローラーがおかしいだけでは起きないはずの事故ということは
やはり,メカを簡素化してソフト偏重にしたか,
あるいは偶発的な不幸な偶然の重なりか.
by 石原茂和 (2006-06-18 18:10)
発表されているコントローラーの障害は
「扉が閉まるタイミング0.25秒以内に開ボタンを押すと、開動作を行いながら上昇する」
という動作で、ほぼ閉まりきった後の開扉動作で、閉まった後ということもあり、事故につながりにくい動作とも思えます。
これに対して芝では
自転車を押しながら挟み込んだ後開いたまま上昇
で、また、数件報告されている
ベビーカーを挟み込んだまま上昇
という閉扉動作中、何かを挟み込んだまま閉じないのに上昇というかなり危険な動作とは異なるものですね。
シンドラー社は、認めても害にならない障害を選択的に認めているようにも見えますね。
ちなみに、ベビーカー挟み込み上昇は、事例が割と多く報告されているようです。
例 (メーカーは不明)
http://www.kiken-kaihi.org/door_jiko.html
ご指摘のような、何かを運びながらの挙動の迷いに加えて、挟み込み検出が、誤動作しやすい要因があるのかもしれません。
by Hiroshi (2006-06-19 23:53)
上記 万世橋ベビーカー挟み込み事故は、原因報告がなされているようでした。
http://www.thr.mlit.go.jp/wwwroot/Bumon/J77100/kisya/20031218_03.htm
(1)エレベーターの低速上昇を指令する制御回路の設計不良
(2)エレベーターの安全装置の不備
2 は 「出入り口の戸が閉じていなければ、かごを昇降させる
ことができない装置」の不備で、具体的にはセンサーが二重化されていないことが指摘されています。メーカーはナショナル工業。
逃げとして「道路施設として作っており、建築基準法の適用除外」
とありますが、道路施設用エレベーターという別のエレベーター設計があるとも思えず、国産エレベーターにおいても安全装置が多重化されていないものが結構存在しているのかもしれません。
by Hiroshi (2006-06-20 00:05)
いつもながら,ナイスなリサーチです.
私も,安全装置の多重化が不十分という見方にならざるを得ませんね.
車イス,ベビーカー,高齢者に共通するのは,
ドア付近での移動速度が,てぶら歩行者よりも遅いということ.
閉まりはじめて,
機械式センサー(ドアの内側のバンパー)にぶつかって
またドアが開くという光景は日常的に見ます.
光学センサーのデュレーションの設定が,
手ぶら歩行者でしか考えていないのかな.
by 石原茂和 (2006-06-20 10:07)