CP対称性の破れ 世界はまだわからないことだらけ [乱読三昧]
年末に、ノーベル賞にちなんで
を読んだ。1997年の本らしい。
良書である。この手の本は素人向けの解説では、たいてい比喩で説明して終わりなのだが、 小林 氏は、説明の限界を明示しつつ、平易に解説できる部分に絞って正確な説明を行うことを心がけているようだ。
同書によると、弱い相互作用によるクオーク相互の入れ替えを表すユニタリー行列の自由度が、物理的に同一な場合を排除して、2次元では 1 3次元では4となり、そのために、虚数成分が入らざるを得ないになることがCP対称性の破れの本質的な原因ということらしい。このことがクォークの世代が3世代以上必要ということに繋がり、6種類のクォークの存在予言になるのだという。意外にシンプルなリクツである。
ただ、素粒子物理の分野では、理論の検証と構築により高エネルギー領域での実験が必要になっているようで、反面、暗黒物質、暗黒エネルギー、大統一理論の矛盾にひも理論と解らないことだらけだ。
進展しているようにみえるテクノロジーも、核融合やロケットなど大型装置を必要とする分野では、開発サイクルそのものが予算の獲得と、施設の建設など10年単位の時間軸を要するため遅々としている。素粒子物理もそうした分野になりつつあるようだ。
今回の受賞もしばらく前の理論だし、理論の確認そのものはかなり後になされているわけで、測定デバイスの高度化に伴って急速に進展した半導体分野とはスピード感に乖離がある。
はたして人間並みの人工知能が実現する前に、重力理論とその他の理論の統一は確認されるのだろうか?
消えた反物質―素粒子物理が解く宇宙進化の謎 (ブルーバックス)
- 作者: 小林 誠
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/06
- メディア: 新書
を読んだ。1997年の本らしい。
良書である。この手の本は素人向けの解説では、たいてい比喩で説明して終わりなのだが、 小林 氏は、説明の限界を明示しつつ、平易に解説できる部分に絞って正確な説明を行うことを心がけているようだ。
同書によると、弱い相互作用によるクオーク相互の入れ替えを表すユニタリー行列の自由度が、物理的に同一な場合を排除して、2次元では 1 3次元では4となり、そのために、虚数成分が入らざるを得ないになることがCP対称性の破れの本質的な原因ということらしい。このことがクォークの世代が3世代以上必要ということに繋がり、6種類のクォークの存在予言になるのだという。意外にシンプルなリクツである。
ただ、素粒子物理の分野では、理論の検証と構築により高エネルギー領域での実験が必要になっているようで、反面、暗黒物質、暗黒エネルギー、大統一理論の矛盾にひも理論と解らないことだらけだ。
進展しているようにみえるテクノロジーも、核融合やロケットなど大型装置を必要とする分野では、開発サイクルそのものが予算の獲得と、施設の建設など10年単位の時間軸を要するため遅々としている。素粒子物理もそうした分野になりつつあるようだ。
今回の受賞もしばらく前の理論だし、理論の確認そのものはかなり後になされているわけで、測定デバイスの高度化に伴って急速に進展した半導体分野とはスピード感に乖離がある。
はたして人間並みの人工知能が実現する前に、重力理論とその他の理論の統一は確認されるのだろうか?
2009-01-18 18:32
nice!(0)
コメント(5)
トラックバック(0)
おお,これは買わなければいけないな.
ちょうど,ディスカバリーで
ホーキング宇宙の始まりと終わり
全2回をリピート放送中です.
http://japan.discovery.com/series/index.php?sid=823
by 石原茂和 (2009-01-20 07:44)
あ、このホーキングの放送は見ました。
年末と年始は、宇宙っぽい番組多いですね。楽しい季節です。
by Hiroshi (2009-01-27 02:08)
そうですか.
番組で出てきた
下世話な話ですが,ホーキング先生,
2人目の奥さんにも愛想つかされちゃったんですね.
でご本人がまた,
あいかわらず皮肉と下世話なエピソードの話が
好きですね.
肉体は少々衰えても,
まだまだ,頭の方は絶好調のようで
うれしかったです.
by 石原茂和 (2009-01-28 13:02)
そういえば、ホーキング氏自体虐待されてたという話もありましたから、それなりにツライことがあったのかもしれませんね。
あと、あの人口音声も、もっとなめらかに出来るらしいのですが、なんかすでに個性の一部になってますよね。
by Hiroshi (2009-02-02 23:21)
むはー,ググったらいっぱい出てきました.その虐待されてた?
という話.そんなゴシップ記事ネタにされるなんて,悲しいなあ.
さて,注文したこの本がやっと来ました.
ユニタリ行列か.
工学系だと,どうしても,自分の領域で使う数学が
固定されてきがちで,そこに固着しがちなのですが,
素粒子物理はすごいなあ.
こういう本をどんどん読んで,つかえる数学の範囲を押し広げて
いかないといけないですね.
私も,幾何と統計学の接点のMorphometricsと応用について
解説論文を書いてしまいました.
石原茂和,Morphometricsと感性工学への応用, 感性工学,Vol.8, No.1, pp.17-23, 2008.
http://www.jske.org/
つかえる数学の範囲が広がるということは,
使える言語が増えることに等しいですね.
by 石原茂和 (2009-02-05 10:00)